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無菌治療部【アニュアルレポート】

1.スタッフ(2025年4月1日現在)

部長 (教授) 神田 善伸(兼)
医員 (教授) 嶋田  明(兼)
藤原慎一郎(兼)
(准教授) 大嶺  謙(兼)
(講師) 佐藤 一也(兼)
山本 千裕(兼)
蘆澤 正弘(兼)
川原 勇太(兼)
(助教) 皆方 大佑(兼)
新島  瞳(兼)
海野 健斗(兼)
川口慎一郎(兼)
吉成 裕紀(兼)
浅井 秀哉(兼)
古屋 開土(兼)
(シニアレジデント) 8名

2.無菌治療部の特徴

無菌治療部では、急性白血病、骨髄異形成症候群、悪性リンパ腫などの難治性血液疾患に対する造血幹細胞移植の診療を行っている。当院では1984年に第1例目の血縁者間移植を実施して以来、2024年までに計1,142件の造血幹細胞移植および細胞療法を実施し、現在は年間約60~80件の移植を実施する全国有数の移植施設となっている。非血縁者間移植および臍帯血移植の認定施設であり、日本造血細胞移植学会の移植施設認定基準「カテゴリー1」にも認定されている。

造血幹細胞移植では、長期間にわたり血球減少および免疫力低下を伴うため、感染症のリスクが高い状態が続く。移植後、血液細胞が回復するまでの間、患者は無菌室で療養する。当院では、2004年に本館4階南病棟にクラス100の病室4床およびクラス10,000の病室4床を有する無菌病棟を開設し、病室のみならず病棟全体が無菌的な環境となるよう整備され、感染予防に優れた環境を提供している。さらに、2016年には本館4階西病棟の16床をクラス10,000の無菌室に改修し、現在は計24床の無菌室を有している。この体制により、県内はもとより近隣他県からの移植目的の紹介患者にも対応可能な体制を整えている。

近年では、HLA半合致血縁者間移植に取り組んでいる。この移植方法では、多くの患者に対し家族内でのドナー確保が可能となり、今後の少子高齢化に伴うドナー不足の解消が期待される有望な移植法である。

造血幹細胞移植では多職種との連携が不可欠であり、医師、看護師、薬剤師、理学療法士、歯科衛生士などとカンファレンス等を通じて情報を共有している。2024年には、専任の造血幹細胞移植コーディネーター(Hematopoietic Cell Transplantation Coordinator:HCTC)が配置された。HCTCは、ドナー選定やスケジュール管理、患者?家族への説明、関係部門との連携などを通じて、移植が円滑かつ安全に行えるよう支援している。看護師を中心とした、同種移植後の患者さんを対象とした長期フォローアップ外来も開設している。造血幹細胞移植を受ける女性患者さんの妊孕性を温存するために、放射線科や産婦人科と連携し、全身放射線照射時の卵巣遮蔽や未受精卵の凍結保存を行っている。

造血器腫瘍に対する新たな治療法であるキメラ抗原受容体T細胞療法(CAR-T細胞療法)の導入にも力を入れている。2021年には再発?難治性の大細胞型B細胞リンパ腫に対するリソカブタゲン マラルユーセル、2022年には再発?難治性の多発性骨髄腫に対するイデカブタゲン ビクルユーセル、そして2024年3月にはアキシカブタゲン シロルユーセルの治療施設として認定された。

認定施設

  • 非血縁者間造血幹細胞移植認定施設(認定カテゴリー1)
  • 非血縁者間骨髄採取認定施設
  • 非血縁者間末梢血幹細胞採取認定施設
  • CAR-T細胞療法治療施設(ブレヤンジ、アベクマ、イエスカルタ)

認定医

  • 造血細胞移植学会造血細胞移植認定医
    神田 善伸 他6名
  • 日本輸血学会認定医
    藤原慎一郎 他2名
  • 細胞治療認定管理師
    藤原慎一郎 他1名

3.実績?クリニカルインディケーター

入院患者数(移植種類別)

移植件数

血液科 / 小児科
年間総数(2024年) 63件 / 11件
血縁骨髄移植 0件 / 1件
非血縁骨髄移植 11件 / 0件
血縁末梢血幹細胞移植 14件 / 0件
非血縁末梢血幹細胞移植 3件 / 0件
臍帯血移植 4件 / 2件
自家末梢血幹細胞移植 31件 / 8件

対象疾患内訳(2024年)

血液科 / 小児科
急性骨髄性白血病 20件 / 1件
急性リンパ性白血病 6件 / 0件
骨髄異形成症候群 3件 / 0件
慢性骨髄性白血病 0件 / 0件
骨髄増殖性腫瘍 1件 / 1件
悪性リンパ腫 13件 / 0件
多発性骨髄腫/類縁疾患 18件 / 0件
造血障害(再生不良性貧血等) 2件 / 0件
固形腫瘍 0件 / 9件
原発性免疫不全症 0件 / 0件

治療成績

2014年から2023年までに実施された成人初回同種造血幹細胞移植において、急性白血病(低リスク)3年生存率66.6%(図1)、3年無病生存率62.5%、3年非再発死亡18.7%、3年再発率18.8%、急性白血病(高リスク)3年生存率27.4%(図1)、3年無病生存率19.1%、3年非再発死亡23.5%、3年再発率57.4%、骨髄異形成症候群3年生存率42.4%、3年非再発死亡39.2%、3年再発率20.7%、急性GVHD(gradeⅡ-Ⅳ)Day100発症率26.5%、急性GVHD(gradeⅢ-Ⅳ)Day100発症率11.3%(図2)、慢性GVHD(100日無病生存者)2年発症率27.7%であった(GVHD発症率は初回移植の成績)。

成人のHLA半合致移植(HLA2抗原以上不適合血縁者間移植)(低リスク/高リスク)成績は、2年生存率35.6%/12.2%、2年無病生存率30.4%/12.1%、急性GVHD(gradeⅡ-Ⅳ)Day100発 症 率16.4%/38.9%、 急 性GVHD(gradeⅢ-Ⅳ)Day100発症率0%/16.7%、2年非再発死亡23.9%/40.4%、2年再発率45.7%/47.5%であった。65歳以上の同種移植成績(低リスク/高リスク)は、2年生存率 50.2%/59.3%、2年無病生存率47.8%/48.0%であった。再発成人症例の2回目の同種移植成績は、2年生存率27%、2年無病生存率23.3%であった。

成人初回自家末梢血幹細胞移植では、多発性骨髄腫3年生存率87.4%、非ホジキンリンパ腫3年生存率78.0%であった(図3)

図1 急性白血病同種移植後生存率
図2 急性GVHD発症率(初回移植)
図3 自家末梢血幹細胞移植後生存率

4.2025年の目標?事業計画等

造血幹細胞移植および細胞療法の件数は年々増加しており、今後も関連病院や県外の医療機関と連携し、できる限り多くの患者にこれらの治療を提供できる体制を目指していく

HLA半合致移植およびCAR-T細胞療法においては、さらなる治療成績の向上に努めていく。

造血幹細胞移植では多職種との連携が重要であり、カンファレンス等を通じて情報を共有し、質の高いチーム医療の実践を推進していく。

HCTCと連携しながら、患者?ドナー?家族への支援、QOLの向上、リスクマネジメント、倫理的配慮などにも積極的に取り組んでいく。

多くの臨床試験や治験に参加しており、それらを通じて造血幹細胞移植診療におけるエビデンスの確立に貢献していく。

主導または参加している主な臨床研究?治験

  • 同種造血幹細胞移植を受ける日本人の造血器腫瘍患者を対象にしたtreosulfanを用いた移植前処置の安全性、有効性及び薬物動態を検討する多施設共同、非盲検、非無作為化、前向き、2段階試験
  • 再発又は難治性の多発性骨髄腫患者を対象にAnitocabtagene Autoleucelの有効性及び安全性を標準治療と比較する第3相無作為化非盲検試験(iMMagine-3)
  • 血液疾患患者における全身化学療法および放射線照射後の抗ミュラー管ホルモンを用いた妊孕性温存の評価に対する前方視的研究
  • 一次治療、二次治療抵抗性の同種移植後移植片対宿主病患者に対する、プロピオン酸ベクロメタゾン(BDP)内服療法
  • キザルチニブの投与を予定している同種造血幹細胞移植可能なFLT3-ITD変異陽性の再発又は難治性急性骨髄性白血病患者の多施設共同前方視的観察研究
  • 非寛解期造血器腫瘍に対するハプロアイデンティカルドナーからのHLA不適合移植後のドナーリンパ球輸注による地固め療法の有効性の検討
  • 進行期MDSにおける早期移植の意義について前方視的試験による検討KSGCT2301(MDS-NARUHAYA)
  • 製品規格に適合しないLISOCABTAGENE MARALEUCELを被験者に投与する拡大アクセス試験(EAP)
  • 自家幹細胞移植後の奏効が不十分な初発多発性骨髄腫(NDMM)成人患者を対象とした、idecabtagene vicleucel(ide-cel)+レナリドミド(LEN)維持療法の有効性及び安全性をレナリドミド単独維持療法と比較するランダム化オープンラベル第3相試験(KarMMa-9)
  • 同種造血細胞移植(同種HCT)を受ける急性骨髄性白血病(AML)患者に対する補助療法及び維持療法としてのMocravimodの有効性及び安全性を評価するための前向き、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照、多施設共同第Ⅲ相試験
  • Aspergillus属による侵襲性真菌症患者を対象に、olorofim治療の有効性および安全性を、AmBisome治療後に標準治療を実施したときと比較する第3相、評価者盲検、無作為化試験
  • レナリドミド非耐容の移植非適応多発性骨髄腫に対するイキサゾミブ維持療法における有効性?安全性の評価とドライバー変異?免疫機能の動態解析(IMTIL試験)

5.過去実績