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小児脳神経外科【アニュアルレポート】

1.スタッフ(2025年4月1日現在)

科長(学内教授) 三輪  点
臨床助教 小熊 啓文

2.診療科の特徴

脳腫瘍、先天奇形(二分脊椎、水頭症など)、脳血管障害(もやもや病など)、外傷、てんかん?痙直などの機能的疾患など、小児脳神経外科疾患全てをまんべんなく扱っている。科長(学内教授)であった五味玲が365体育娱乐场7年3月で定年退職となった。それまでは、五味?小熊と半年交代の脳神経外科専攻医(甘糟?山本?大川)の3人体制であった。

①頭のかたち外来

2021年に開設した「頭のかたち外来」は「向き癖」などによる頭部変形に対してヘルメット矯正治療を行うもので、高額な自費診療となる。

受診は紹介を原則としている。全員にヘルメット矯正治療をしているわけではなく、軽症例や、治療効果がやや劣る開始時月齢7か月以上ではあまりお勧めしていない。それでも、ヘルメット矯正治療を希望される方には治療を行っている。

2021年6月の開設から2024年12月までに「頭のかたち外来」に600名以上受診されており、2024年は62名の頭蓋形状矯正ヘルメット作成を行い治療した。栃木県内はもとより近隣県でも同様の治療を行っている施設が少ないため、県内外から数多くのご紹介をいただいている。

治療の流れは①初診(保険診療)で診断、②頭部のスキャン(この際に治療費一括納入)、③スキャンの2週間後にヘルメット完成し治療開始、④4週ごとにクッションの交換、⑤装着後約6か月で治療終了(クッションの交換は5?6回)となる。

つまり初診から治療開始まで、最短2週、通常3?4週になるので、初診時に生後6か月でも治療開始時点で生後7か月以降になる。できれば治療開始月齢は生後4-5か月が理想である。

スキャンやクッションの張り替えは業者の方にお願いしている。これが2週毎のため治療中の患者さんの半数がその日に集中する。その結果、金曜日の午後だけで予約患者数が30名前後となっている。

ヘルメットは、当初は「アイメット」を用い、2022年4月から「クルム」を採用した。さらに業者と協力してヘルメット改良に取り組んだ結果、新しい「クルムフィット」を開発し、2024年から使用開始している。

②脳脊髄腫瘍

当科での手術、放射線治療部での治療、小児科での化学療法と、総合的な治療体制を確立して治療に当たっている。

2024年は腫瘍関連の手術数は開頭摘出術8例9手術、内視鏡的摘出術5例、内視鏡生検3例であった。初発例は7例で、髄芽腫、松果体芽腫、視神経膠腫、胚細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫、非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、神経芽腫小脳転移がそれぞれ1例であった。再発例は5例で、上衣腫、頭蓋咽頭腫、胚細胞腫瘍(growingteratoma)、髄芽腫脊髄播種、小脳神経グリア腫瘍であった。

これまで頭蓋咽頭腫小児例は全例開頭での摘出であったが、トルコ鞍内限局頭蓋咽頭腫の女児例で、外部から術者を招聘し小児例では初めて経鼻内視鏡的に全摘出を行った。また非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍は獨協医大から紹介転院となった先天性脳腫瘍(胎児期発見)であった。

死亡例は1例で、上衣腫の播種再発に対して多数回手術を行ってきた例で、最終的に小児緩和ケアチームの地域連携体制のもと在宅医と連携し、在宅でのお看取りとなった。

化学療法例6例のうち1例は神経芽腫小脳転移例で、もともと小児科で化学療法後であった。髄芽腫初発例、髄芽腫播種再発例、胚細胞腫瘍、松果体芽腫、非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍の5例は、摘出後の化学療法を小児科に転科し血液腫瘍班で治療していただいた。臨床試験に参加し治療している例もあるが、治療選択が難しい例も多く、カンファレンスで検討の上、治療方針?治療方法を決定している。なお、2024年は、外来化学療法を行った例はなかった。

放射線治療についても、放射線治療部と週1回カンファレンスを行い、綿密な連携体制のもと施行している。積極的にIMRTを用いて、正常組織への照射量低減を試みている。定位放射線治療については、2024年からは当院新施設でHyperArkによる治療が開始となり、外来での神経線維腫症2型の多発腫瘍のうちの増大腫瘍や、ラブドイド髄膜腫や頭蓋咽頭腫の局所再発例などに対して治療をしていただいている。

脳腫瘍の遺伝子検索が発達し、診断?治療に大きく寄与している。特に2024年はBRAF遺伝子変異腫瘍に対するBRAF/MEK阻害薬が保険収載されたことが、とても重要なできごとだった。これまで遺伝子変異はJCCG(日本小児がん研究グループ)の固形腫瘍観察研究における遺伝子検索でお願いしていたが、これはあくまでも研究目的のため、この陽性所見だけでは保険収載されたBRAF/MEK阻害薬を用いることができない。BRAF遺伝子変異をがんゲノムプロファイリング検査(パネル検査)などで確定しておく必要が出てきた。そのためJCCG研究でBRAF遺伝子変異が指摘されている2021年手術の神経膠腫2例について、パネル検査を施行した。これにより、万が一の再燃時にはBRAF/MEK阻害薬が使用できることとなった。JCCG(日本小児がん研究グループ)の固形腫瘍観察研究における遺伝子検索には7例提出した(うち脳神経外科手術のAYA世代1例)。中央病理診断や遺伝子検索で診断が変更となった例が2例あった。

③先天性疾患(二分脊椎、水頭症など)

二分脊椎では2024年は脊髄髄膜瘤の出生はなく、手術症例は脊髄髄膜瘤術後再係留1例と潜在性二分脊椎の係留解除手術9例であった。9例全例が初発例であった。内訳は円錐部脂肪腫4例、終糸脂肪腫4例、緊張肥厚終糸1例である。2008年に開設した二分脊椎外来も17年目となった。小児脳神経外科、小児泌尿器科、小児整形外科、小児外科、小児科などの多科が協力して診療を行っており、治療方針の決定も毎月の二分脊椎カンファレンスで検討している。

水頭症に対する手術では、新規のシャント造設例は1例もなかった。シャント不全によるシャント再建術2例、内視鏡的開窓術4例であった。乳幼児の新規シャント手術が減少しているのは、少子化による患者数減少とともに、内視鏡手術が発達してきたためと考えられる。

頭蓋骨縫合早期癒合症の手術も大きく変わってきている。従来からのMCDO法?頭蓋形成法では、主科が形成外科で小児脳神経外科が協力しての共同手術で行われている。2024年はMCDO法を2例共同で手術を行った。一方低月齢の症例に対して、小児脳神経外科単独で縫合切除術+ヘルメット矯正治療を2021年から開始しており、2024年も2例施行した。1例は前頭縫合早期癒合症で、もう1例は両側ラムダ縫合矢状縫合早期癒合症というまれな病態であった。後者は自治医大さいたま医療センターの小児科?頭のかたち外来、細野茂春先生からの紹介だった。さいたまとの連携の好事例といえよう。

その他の先天性疾患では、Chiari奇形1例と軟骨無形成症1例に大後頭孔減圧術を行ない、閉鎖性脳瘤の切除を2例行った。

④脳血管障害

2024年はもやもや病に対する直接+間接血行再建術(浅側頭動脈?中大脳動脈吻合術+EDAMS)を4例に行い、いずれも脳梗塞や過灌流症候群などの明らかな周術期合併症はみられなかった。

脳出血発症の脳動静脈奇形が4例と多かった。脳動静脈奇形が出血の深部であった1例は内視鏡での血腫除去を行った後に脳血管造影を行い、定位放射線治療を行った。脳動静脈奇形が血腫内で摘出可能な位置にあった3例では、緊急で一期的に血腫及び奇形の摘出を行った。重症例で脳浮腫による内減圧をその後要したが、2例は良好な経過であった。

⑤頭部外傷

急性硬膜外血腫手術例が2例あった。0歳例は小開頭血腫除去と脳圧モニター挿入を行い管理を行い、一時的にてんかん後脳症様の画像を呈したが、幸い改善した。2歳の重症例は著明な脳圧亢進で開頭血腫除去及び内減圧?外減圧を行ったが、その後別な部位の血腫が増大し翌日再度血腫除去を行った。その他に11歳の慢性硬膜下血腫症例があった。

⑥機能的疾患(てんかん、痙直)

2016年から小児のてんかん手術が本格的に開始され、てんかん拠点病院であることもあり、当院小児科や他施設からの紹介例が多い。2024年も7例8手術を行った。脳梁離断術3例、焦点切除術1例2件、半球離断術1例、前頭葉切除術1例、迷走神経刺激装置埋込術1例である。これらは、成人のてんかんチームが手術を担当し、小児脳神経外科で管理をサポートしている。

痙直に対する手術はポンプ交換が4例あった。

?認定施設

日本小児血液?がん専門医研修施設

?専門医

日本脳神経外科学会専門医 五味  玲
小熊 啓文
日本小児神経外科学会認定医 五味  玲
小熊 啓文
日本神経内視鏡学会技術認定医 五味  玲
日本がん治療認定医機構がん治療認定医 五味  玲

3.診療実績?クリニカルインディケーター

1)新来患者数?再来患者数?紹介割合

新来患者数 300人
再来患者数 1,737人
紹介率 82.1%

2)入院患者数 (病名別)

病名 患者数
頭部外傷 11
脳脊髄腫瘍 14
二分脊椎 15
水頭症 5
脳先天性疾患 11
機能(てんかん?痙直など) 10
血管(もやもや病?AVMなど) 16
その他 1
合計 83

3?1)手術症例病名別件数

病名 症例数
脳脊髄腫瘍 18
頭蓋?脳先天性疾患 9
二分脊椎 12
水頭症 8
もやもや病等バイパス手術 4
脳動静脈奇形等血管奇形 6
てんかん等機能的疾患 12
頭部外傷 4
感染 1
その他 8
合計 82

3?2)手術術式別件数?術後合併症件数

病名 症例数 合併症件数 再手術症例数
開頭腫瘍摘出術 9 0 1
内視鏡的腫瘍摘出/生検 9 0 0
二分脊椎手術(係留解除術) 10 0 0
脳室腹腔シャント術 3 0 0
血行再建術(直接+間接) 4 0 0
MCDO 2 0 0
軟性内視鏡手術(腫瘍除く) 4 0 0
開頭てんかん手術 7 0 1
血管内治療 0 0 0
その他 33 0 0
合計 82 0 0

4)化学療法症例病名別?数

病名 症例数
髄芽腫 2例
ATRT 1例
松果体芽腫 1例
視神経膠腫 1例
胚細胞腫瘍 1例
神経芽腫転移 1例

(小児科転科で施行したものも含む)

5)放射線療法症例?数

病名 症例数
髄芽腫 2例
胚細胞腫瘍 1例
松果体芽腫 1例 他院で陽子線治療

6)その他の療法(免疫療法)症例?数

なし

7)悪性腫瘍の疾患別?臨床進行期別治療成績

橋神経膠腫 平均生存期間9.7ヶ月
髄芽腫 5年生存率 83%

8)死亡症例?死因?剖検数?剖検率

死亡症例 脳腫瘍1例
上衣腫播種症例で在宅で死亡
剖検数 0例
剖検率 0%

9)主な処置?検査

特になし

10)カンファランス症例

二分脊椎カンファレンス
第一水曜日(祝日は休み)

2月7日 症例検討会
3月6日 症例検討会
4月3日 症例検討会
5月1日 症例検討会
6月5日 症例検討会
7月3日 第41回二分脊椎研究会予演会
症例検討会
9月4日 症例検討会
10月2日 症例検討会
11月6日 症例検討会
12月4日 症例検討会

その他は脳神経外科と同様に行っている。
小児緩和ケアチームカンファレンス(隔週水曜日)
虐待についてのカンファレンス:適宜開催

11)キャンサーボード

小児はキャンサーボード対象外
子ども医療センター内で対象症例毎に検討

4.2025年の目標?事業計画等

  • JCCG脳腫瘍グループとしての共同研究の継続
  • 成人頭蓋変形例の検討(小児頭蓋変形の長期予後)
  • 仙尾部dimpleの長期予後の研究

5.過去実績