放射線治療部【アニュアルレポート】
1.スタッフ(2025年4月1日現在)
| 部長 | 白井 克幸 |
|---|---|
| 技師長 | 根本 幹央 |
| 診療放射線技師(総数) | 16名 |
放射線診療業務には画像診断領域と、がん治療領域の2種類が存在しており、両分野とも専門性が高い。放射線治療は、がん治療の3本柱の一つと言われ、多くのがん患者に対して治療を行っている。放射線治療部のスタッフは、放射線治療医?診療放射線技師?看護師?事務職員で構成されている。
2.放射線治療部の特徴
放射線治療部は高エネルギー放射線を用いて、がん患者の治療を行う部署であり、根治?予防?緩和医療と多岐にわたって、患者の生命や予後に関与している。放射線治療部では、リニアック4台、密封小線源治療装置1台、外部放射線治療計画用CT装置1台、密封小線源治療計画用CT装置1台を保有しており、これらを使用して放射線治療を行っている。2024年の新規患者数は948名で昨年よりも微増した。また、再診患者は1387名であり、年間の延べ治療患者数は18000名程になっている。従来の分割照射よりも寡分割照射(一回線量を増加して短期間で照射を終了する)が増え、単回照射の適応患者も増加している。更に定位照射の患者も増えているので、新規/再診患者が共に増加していながらも、のべ患者数は減少傾向となっている。
次に照射内訳であるが、放射線による外科手術とも言われる定位照射は96名(脳定位37名、体幹部定位59名)に治療を行っており、新規に導入されたリニアックが脳の定位照射に対応出来るようなったため3倍以上に増加している。高精度治療の中心を成す回転型強度変調放射線治療(VMAT)の実施率は全治療患者の38.1%で、2023年よりも5%増加した。根治療法としての恩恵を享受できる重要な照射技術であるため、対象部位は従来の前立腺癌や頭頸部腫瘍だけでなく、脳腫瘍、食道癌、進行期肺癌へと今後益々拡大することが容易に想像される。
密封小線源治療については、患者数55名(婦人科疾患48名、口腔外科?耳鼻咽喉科関連7名)となっている。全症例で画像誘導密封小線源治療(IGBT)が実施されており、組織内照射を組み合わせた組織内照射併用腔内照射(IC/IS)は、日常的に実施されている。高精度外部放射線治療や密封小線源治療のような照射技術を安全に実施するためには、高い専門性が求められる。このためスタッフには、関連資格の取得を強く推奨している。現在、関連資格を持つスタッフ(複数種の取得含む)は以下の様になっている。
日本放射線腫瘍学会 認定施設(A)
| 放射線治療専門医 | 5名 |
|---|---|
| 医学物理士 | 5名 |
| 放射線治療専門放射線技師 | 6名 |
| 放射線治療品質管理士 | 8名 |
| がん放射線療法認定看護師 | 1名 |
3.放射線治療部の業務件数推移
4.2024年の事業報告
2024年4月より放射線治療棟での業務が本格的に開始された。治療室B及び治療室Cに導入された2台の外部放射線治療装置は、順調に受入れ患者数を増加させている。治療室Bに設置されたE-THOS Halcyonは高精度治療専用機であり、適応放射線治療(AdaptiveRadiotherapy)が可能な最新型リニアックである。従来装置と比較して、VMATの治療時間も短縮されている。一部の高精度治療の症例では治療前処置が重要となるため、治療直前の状態によってはスムーズに治療を開始できず、予約時間に遅れが生じてしまうケースもあった。しかし、本装置によって短時間での治療が可能となった結果、前処置の影響による予約時間の遅延が軽減され、全体のスループット向上にもつながっている。特徴的な機能としてAdaptive Radiotherapyが挙げられ、有害事象の低減と治療効果の向上が期待できる。今後、積極的に実施を推進したいが、従来の治療法とは異なり多くのマンパワーを要する。このため、現状では1~2名/日程に適応患者を絞って実施している。将来的には、主たる治療技術として普及することは間違いなく、マンパワーの増加を抑えつつ実施可能となれるよう環境整備を進めてゆく必要がある。
治療室Cに設置されたTrueBeamも高精度治療に対応可能な装置であるが、一般的な多目的汎用機でありさまざまな治療に対応する必要がある。E-THOS Halcyon程の高スループットは望めないが、特殊治療にも対応可能な汎用機として、最も多くの患者を治療している。なかでも特徴的な治療として、序文でも触れた脳定位照射(Hyper-Arc)と呼ばれるシステムがある。以前は1997年に導入されたXknifeという脳定位システムを使用していたが、装置の老朽化に伴い臨床使用が困難となり、殆どの症例を他施設へ紹介していた。しかし、2024年7月にHyper-Arcの使用準備が整い初例を開始できたことで、他施設への紹介は減少してきている。Xknifeシステムによる治療も過去に多く実施されていたことから、今後の症例増加が見込まれる。63000点/件という高額な収益構造の治療でもあるため、積極的な受け入れ体制を確保したい。
一方、本館西棟地下では2台の汎用機が現在も稼働している。いずれも稼働15年前後の装置で老朽化が著しく、高精度治療には対応できない。そのため、単純な治療で問題とならない症例に限って使用を継続している。2区画に分かれての業務運用は非効率な面もあるが、現時点ではこの2台を停止することは現実的ではない。2026年1月には、治療棟に3台目の治療装置が設置されて、最も古い装置が撤去される予定である。その2年後を目途に、残る1台も治療棟に更新され、本館での業務は終了する予定である。本来、本館地下で治療を受けている患者にも高精度治療を提供できる体制が望ましく、収支改善の観点からも高精度治療への移行を進めたい状況となっている。しかし、それは数年先の予定である。現時点では、修理回数の多い状況になっているが、完全に治療棟へ業務移管できる時まで、安全に継続使用できるよう精度管理を徹底し適切な管理を継続している。
5.2025年の目標?事業計画等
新棟のリニアックは安定稼働し始めているものの、一部の新機能については十分に活用しきれていない。特に体表面画像誘導装置(SGRT)については、現段階では十分に運用するに至っていない。このため、短期的な目標としては本年度中にSGRTの運用準備を整え、2026年度には本格稼働を開始できるようにする事を目指している。今後の目標としては、高精度治療実施率の更なる向上にある。患者?附属病院の双方にとって有意義な治療法でもあるため、更に注力してゆきたい。また、放射線治療という診療そのものは安定してきているが、放射線治療部としての組織的業務マニュアルなどの整備は未だ十分とは言えない。治療件数の増加も重要ではあるが、長期的に安定した診療を継続するためには、継続性を意識した体制整備にも注力したいと考えている。あわせて、診療放射線技師の放射線治療関連資格の取得者数を増やせるように努めてゆきたい。
